こんにちは、リオです。今回は以下の記事“パイロットになるための方法5選”でも言及した航空会社から訓練費用を借りてライセンスを取る制度について、詳しく解説していきます。
概要
この制度は、パイロットの人材を確保したい航空会社がパイロットを志望する人に訓練費用を貸し付け、無事にライセンスを取得できたらパイロットとして自身の航空会社に就職してもらおう、という制度です。
現在日本では、琉球エアーコミューター(以下RAC)とPeachの2社がこの制度を実施しています。RACの制度ではRACに就職すれば訓練費用の返還が免除されたり、Peachの制度では訓練期間中にチャレンジ手当が支給されたりと、自社養成に似ている部分もあります。一方で自社養成とは異なる部分もありますので、RACの制度とPeachの制度をメリット・デメリットを含め個々に解説していきます。
琉球エアーコミューター(RAC)の制度
初めに最も重要なことが応募資格に記載されていますが、原則として沖縄出身でなければならないようです。沖縄で生まれて1歳から他県で過ごしていても沖縄出身なのか、一方で小学生から大学生まで沖縄で過ごしていても沖縄生まれでなければ沖縄出身ではないのかなど、線引きが難しいので敢えて詳しくは書かず幅を持たせる書き方がしてあるように思いますので、少しでも沖縄に縁があれば応募しても良いのではないかと思います。(航空業界ではこのようにいかようにも個人の解釈ができる書き方がよくされるので、いかにも航空会社らしい募集要項だと思いました。)
RACの制度では、訓練費用の貸し付けではなく、奨学金の貸与と記載されております。そして奨学金の説明として、以下のように記載されています。
奨学金制度とはパイロットの資格取得に必要な訓練費用などを対象に奨学金を貸与します。
https://rac-okinawa.com/pressrelease/23016/
そして奨学金の貸与を受けた学生がパイロット資格を取得した後、RACにパイロット職として入社し一定期間勤続した場合、全額返還を免除する制度です。
実際の流れとしては、まず奨学金対象者としてRACの選考に合格した後、さらに崇城大学のパイロット養成プログラムの研究生としての入学試験を受験し合格する必要があります。
次に崇城大学の学生としてライセンスの取得に挑むわけですが、通常の崇城大学のライセンス取得課程に入学した場合、四年制大学の卒業資格に必要な単位も取得しなければならないので、卒業には4年かかります。一方でこの制度の場合は研究生という身分で入学するため、そういった単位の所得は必要なく、パイロットライセンスの取得に必要な2年が、卒業までにかかります。
無事にライセンスが取得できると、いよいよRACに就職するのか、取得したライセンスを持って他の航空会社に就職活動を行うのかを選択することになります。募集要項には、資格取得後RACの運航乗務員訓練生として入社し職務を遂行する意思のある方との記載がありますが、奨学金対象者として選考時にはその意思があったとしても訓練中にその意思がなくなってしまうこともあると思いますので、必ずしもRACに就職する必要はないと思います。ただし、そうした場合には二度とRACには戻れないという覚悟は持っておいた方が良いでしょう。
琉球エアーコミューター(RAC)の制度のメリット・デメリット
この制度のメリットは、RACに入社し一定期間以上RACで働くならば、訓練費用が無料になる点です。またこちらは明記はされていませんが、あらかじめRACが実施する選考を通過しなければならないので、裏を返せば無事にライセンスを取得できれば、改めてRACの採用試験を受ける必要はなさそうです。ライセンスを取得した後の就職先が決まっていることは、訓練生にとっては大きな心の支えになるでしょう。
デメリットは、RACに入社しない場合には奨学金を返還しなければならないことです。崇城大学の四年制のパイロット要請課程の訓練費用が約2,358万円なので、全てはかからないだろうと考えられますが、少なく見積もっても2,000万円程はかかると考えておいた方が良いでしょう。
また崇城大学生として訓練を受けるため、自社養成やPeachの制度とは異なり、訓練期間中にRACから給料や手当が支給されることはなく、生活費などはかかります。
Peachの制度
Peachの制度では、提携先である三井住友銀行からローンによる貸付けを受け、訓練費用に充てることができます。もちろんこのローンは必須ではないので、貸付けを受けなくても約1,460万円(92,000ポンド)の訓練費用を支払うことができるならローンを受ける必要はなさそうです。
実際の流れとしては、まずパイロットチャッレンジ生としてPeachの選考を受ける必要があり、無事に合格するとPeachの社員として採用されます。この後約2年間の海外での訓練(以下、前半訓練)を経て、海外で有効なライセンスを取得します。
このあとにもう一度Peachでの採用選考を受け無事に合格すると、更に約半年間の日本での訓練(以下、後半訓練)を経て海外で有効だったライセンスを日本で有効なものに書き換えます。
Peachの制度のメリット・デメリット
この制度のメリットは前半訓練中もPeachから月額約23万円のチャレンジ手当が支給されること、ならびに後半訓練の訓練費用をPeachが支払ってくれること及び後半訓練中は給与が支給されることです。
またこちらはあくまで推測ではありますが、あらかじめPeachが実施する選考を通過しなければならないので、前半訓練と後半訓練の間の採用選考はよっぽどのことがない限り基本的には通るのではないかと思います。つまりチャレンジ生として採用されたならば、Peachへの入社はほぼ決まったと言っても過言ではないでしょう。
デメリットは、Peachを退職する場合にはローン残債を一括返還しなければならないことです。残債額にもよりますが、ローンが残っている間は転職は難しくなってしまいます。(ただしこの条件があるため、チャレンジ生を簡単に退職させる訳にはいかず、上述の通り前半訓練と後半訓練の間の採用選考が基本的には通るものであるとも考えられます。)
またそうは言っても、上述の内容が明記されているわけではなくPeachへの入社が確約されているわけではないこともデメリットとして挙げられます。万が一、前半訓練と後半訓練の間の採用選考に落ちてしまった場合には、ローンの一括返済が求められ、ライセンスの書き換えのための費用がかかり、更に無事に書き換えが完了した後に改めて航空会社の採用試験を受けなければならないと、時間と費用が余分にかかってしまう可能性もあります。
まとめ
ここまで、RACとPeachの制度について解説してきました。まとめると、RACの制度を利用すべき方は下記の通りです。
- 沖縄に少しでも縁があり、将来RACでパイロットとして働きたいと思っている
- 2年間の訓練期間中の生活費を出せるくらいの金銭的余裕はある
また、Peachの制度を利用すべき方は下記の通りです。
- 訓練費用や訓練期間中の生活費を出す金銭的余裕はないが、将来的にそれを返済しながら働けるならパイロットになりたい
- 将来Peachでパイロットとして働きたい
この記事が少しでもパイロットを志している方の手助けになれば幸いです。これからも、航空業界に関する記事も更新していきますので、航空業界に興味がある方はぜひチェックしてみてください。
それでは、Good Day!!