パイロットになるための方法5選

航空業界

初めまして、リオです。初回は現役パイロットである筆者が、日本で航空会社・エアラインのパイロットになる方法を紹介していきます。

大前提として、パイロットになるためには飛行機のライセンス(事業用操縦士資格)を取得する必要があります。そして日本でそのライセンスを取得する方法は、5種類存在します。これらのメリット・デメリットを具体的に紹介していきます。

航空会社の自社養成

はじめに紹介するのは航空会社に就職して、航空会社の社員として航空会社が訓練費用を出してライセンスを取得する方法で、航空会社が実施しているこの制度を「自社養成」と呼びます。

メリットは、航空会社が訓練費用を出してくれるので、自身では訓練費用が全くかからないことです。更に航空会社の社員として訓練を行うので、費用がかからないだけでなく訓練期間も給料が支払われます

こうして見ると非常に大きなメリットがあり、もはや自社養成でパイロットになれば良いように思えますが、その大き過ぎるメリットが故に非常に高い倍率がデメリットです。その倍率は公表こそされていないものの、約100倍と言われています。

自社養成パイロットの採用を実施している航空会社は、4社あります。

  • JAL(Japan Airlines:日本航空)
  • ANA(All Nippon Airways:全日本空輸)
  • ANA ウイングス
  • スカイマーク

さらに自社養成に近い制度を導入している航空会社が2社あります。

  • Peach
  • RAC(Ryukyu Air Commuter:琉球エアーコミューター)

こちらの制度は少し注意が必要です。注意点について知りたい方は以下の記事で取り上げていますので、そちらもご確認ください。

航空大学校

次に紹介するのは、日本唯一の国立パイロット養成機関である航空大学校に入学してライセンスを取得する方法です。

メリットは、訓練費用の一部を国と航空会社が負担してくれていることです。これは航空大学校が、国からの出資金(税金)、航空会社からの出資金および学生の負担金(授業料等)によって運営されているからです。具体的には、入学料と授業料で349万円です。

デメリットは、こちらも自社養成と同様、その倍率です。航空大学校はホームページのQ&Aのページに過去5年間の受験者数と合格者数ならびに倍率が公表されています。これによると、近年では約10倍と決して低いとは言えない倍率となってしまっています。

私立大学のパイロット養成課程

私立大学のパイロット養成課程は、2006年に国内で初めて東海大学が創設しました。現在、パイロット養成課程がある大学は6校あります。これらの大学に入学し、ライセンスを取得する方法です。

メリットは、上記2つの方法に比べると入学の倍率が比較的低いことです。参考までにパイロット養成課程のある6校の2023年度入学試験の倍率を記載しておきます。

大学名桜美林大学工学院大学崇城大学第一工科大学東海大学法政大学
倍率1.34.64.6非公開2.23.5

また、四年制大学の卒業と同時にライセンスを取得できることから、上記2つの方法と比べて、若い内に航空会社でパイロットとして働き始めることができます。たった2〜3年の違いに思われるかもしれませんが、機長として働く期間が2〜3年延びるということなので、機長の年収を1,500万円と仮定しても、生涯年収が3,000〜4,500万円変わることになります。また航空会社としても同じライセンスを持っているなら、若い人材を採用するでしょう。つまり就職活動も少し有利になります。

デメリットは、高額な授業料です。こちらも参考までにパイロット養成課程のある6校の入学から卒業までの4年間で必要な授業料を記載しておきます。航空大学校が349万円なので、その差は歴然としています(1US$=¥120換算)。

大学名桜美林大学工学院大学崇城大学第一工科大学東海大学法政大学
授業料1,117万円2,777万円2,358万円2,291万円1,761万円1,218万円
※入学金および授業料以外に寮費が含まれています。

この他にも、パイロット養成課程のある高校や専門学校もありますがあまりオススメはしません。理由は以下の記事で取り上げていますので、四年制大学に進むか専門学校に進むか、それともそもそも高校からそういった学校へ進学するか悩んでいる方は確認してみてください。

自衛隊から転職

自衛隊でライセンスを所得して、航空会社へ転職する方法もあります。自衛隊の航空学生として採用され、航空自衛隊または海上自衛隊で約2年間の訓練を終え、ライセンスを取得した後に航空会社へ転職する流れになります。

メリットは自衛隊が訓練費用を出してくれるので、自身では訓練費用が全くかからないことです。更に自衛隊の隊員として訓練を行うので、費用がかからないだけでなく訓練期間も給料が支払われます

デメリットは転職のしにくさと言われています。これはあくまで噂ですが、自衛隊が訓練費用を出すということは税金を使って訓練をすることになるので、自衛隊としても簡単に転職を許すわけにはいかず非常に転職しにくいと言われています。それでも、実際に自衛隊から転職してきている同僚もいますので、決してできないということではないようですが、非常に少数派であることは間違いないでしょう。

自費でのライセンス取得

最後に紹介するのは、自費で日本やアメリカのフライトスクールに通い、ライセンスを取得する方法です。

ここまであえて触れませんでしたが、上記4つの方法でライセンスを所得する際には、フェイル(Fail)という言葉が常に付き纏ってきます。訓練の節目で審査を受けなければなりませんが、その審査に2回連続で不合格となった場合には、フェイルとなります。航空会社、四年制大学または自衛隊の場合パイロット養成課程から外れ、一般社員、一般の学部生または一般の自衛隊員に戻らなければいけません。また、航空大学校の場合そのまま自主退学となります。

ここまでフェイルについて説明しましたが、自費でライセンスを取得するメリットはこのフェイルという概念がないことです。審査に不合格になっても、追加の訓練費用や再審査の費用はかかるものの、何度でも審査を受験することができます

デメリットは高額な費用就職のしにくさです。具体的な額はフライトスクールによって異なりますし、日本で取得するのかそれともアメリカで取得し日本でも有効となるように書き換えを行うのかによっても異なります。ただ一般的には約1,000万円かかると言われています。またアメリカで取得する方が少し安めに抑えられるとも言われていますが、これは為替によっても異なりますので、世界情勢を見極める必要があります。

さらに自費で取得する場合、この金額を働いて貯める必要があります。平均初任給が約21万円ですので手取りは約17万円と考えると、手取りを全てを貯金できたとしても1,000万円貯めるのに約5年かかります。実際には生活費や交際費を差し引かなければならず、5年以上はかかるでしょう。上記の私立大学での取得のメリットとしても書きましたが、パイロットになるのが5年遅れると生涯年収が約7,500万円減ります。また就職活動の際に他の就活生よりも年齢が高いので、不利になってしまいます。

まとめ

ここまで日本の航空会社でパイロットになるための具体的な方法と、そのメリット・デメリットを解説してきました。一言でまとめると、比較すべき点は倍率費用です。

この記事が少しでもパイロットを志している方の手助けになれば幸いです。今後、航空業界に関する記事も更新していきますので、航空業界に興味のある方はぜひチェックしてみてください。

それでは、Good Day!!

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